今朝も手紙が一通、届いた。随分遠くから出されたその手紙は、子供っぽい字が並んでいてなんとなく心が揺れた。
 私は手紙の中からまた一つを拾い上げ、読み始めた。退屈ばかりが募り、何をする気も起こらない。気分転換が必要なのかもしれない。少なくとも死ぬ前に一度。手紙をまとめて、箱にしまうと、部屋が広く感じられた。まるで宇宙ほどにも。もう何度目か分からない絶望が、私を揺らした。
 つい先ほどまで外に出たくないと思っていたのに、急に現れた勢いでふらふらと縁側に出て空を見上げると、丁度宇宙船が旅立つ所だった。青い空に突き刺さるみたいに飛んでゆくロケット。薄い青の大気圏を突破して、暗い宇宙へと。新しい種類の鳥か何かのようだった。宇宙で息の出来る鳥、宇宙で生きていける鳥。
 機体はキラキラと輝く。太陽の光を反射して、信じられないほどの速度をもって。美しかった。いきなり道で会った男に頭をぶん殴られた位の衝撃。痛みに涙が出そうになるほど。耳鳴りがする。頭の中では音楽が鳴り響き、気分が異常な程に高揚してきた。
 私はその様子を見上げながら、暫くぶりに外に出てみようかと考えるようになった。もう何日もまともに食べていなかったにもかかわらず、急に食欲がわいてきた。世界に色が戻り、鮮やかな色彩が私を包む。些か過剰な程激しいコントラストは、この世が夏に近づいていることを示している。

(from your planetより一部抜粋)







   ずっと未来、人類は新たな大地を求めて地球の外に住み始めていた。一方本田菊は、友人達から届く手紙をぼんやりと読んでいる。ある日彼は、旅に出ることを決意するのだった。

 ミタライナオユキと総勢12名の絵描きさんが送る、スペースというにはちょこっと狭いオペラ。
 5月3日、発売予定。

通販受付中


仕様
発売日:2010/5/3 SUPER COMIC CITY 2日目
スペースNo.:東3ホール レ60a
規格:A5 88P
価格:800円

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